ニーム(スダウ)で農村開発支援活動                 

                                 NPO法人 日本ニーム協会  カンボジア支部   岩本 彪

森の国カンボジアではニーム(neem)をスダウ(sdou)と呼び、古来から解熱作用がある若葉を食材にし、幹の樹皮を煎じて熱冷ましに用いていました。今日でも、この樹の蕾の時期、1月から3月頃の高温期に、身体の火照りを鎮める効果があるとして花と若葉をサラダやスープの具にしています。

インドの人々は昔からニームの樹に尊敬の念を抱いておりました。何世紀もの間、庶民はニームの小枝で歯を磨き、ニームの葉の液を塗って皮膚病を癒し、強壮剤としてニーム茶を飲用し、防腐剤の代わりにニームの葉をベッドや本、穀物箱、食器棚やタンスに入れていました。

インドの庶民にとってニームは驚異的な力を持つ樹であり、現在に至って、世界の企業や科学者たちはおよそ30年に渡る研究の結果、この本性のわからない樹が、貧困国にも富裕国にも多大な利益をもたらすのではないかと、多くの学問分野で期待されるようになっています。きわめて慎重な研究者たちの間からも、ニームは驚異的な植物であるという意見が現れ始めています。

とりわけニームは、環境に優しい方法で作物を保護するようになる、新世代のソフト農薬の先駆けになる可能性があることに注目されています。

人と地球を救う樹として注目されているこのニームを、カンボジアの人々が自立するために活用することを願って、私たちは2006年からNGOとして、啓蒙・促進活動を行っています。

首都プノンペンから約70kmのカンダル州クサチュカンダル郡シトー・コミューン近在の樹木から採取した種子を約500本育苗し、トウルバサン中学校長の協力で、近在の小学校や農家に提供しました。

首都プノンペンでは今年、キエンスバイ地区に育苗供給場を設け、国道1号線の拡幅整備によって移転する、約350戸の人々が暮らし始めた移住地に、木陰を提供する予定です。

また、シェムリアプにはコンレンコミューンに約1haの農地を育苗・苗木供給センターとして整備しました。カンボジアには森の日が制定されていますが、昨年6月、アンコールワットの眼下に暮らす地域の17の学校と近在の農家に苗木を提供しました。

私たちが取り組んでいるニームは、日本では同じ仲間の樹木で栴檀があります。栴檀は長い進化と土壌風土に適応してきましたが、ニームと同じ効用はありません。また、ニームは摂氏23℃以下では成長出来ず、葉を落として枯れてしまいます。日本の気候では、露地の生育が出来ません。

私たちは森の国カンボジアが、緑豊かな美しい国になる日を夢見ています。

                                                         岩本 彪